瞑想を1ヶ月つづけて、何も変わらなかった人。
目を閉じているあいだに考えごとがふえて、かえって落ち着かなくなった人。
どちらも「意味ない」と言いたくなります。僕は、その言い分を否定する気はないです。
先に結論を書きます。瞑想は意味がないのではなく、期待の大きさが、測られた効き目より大きいだけです。
期待の側と、測られた側を、べつべつに並べます。
順番に書きます。
測ると、効き目はこの大きさ
健康なふつうの大人だけを集めた、13の試験があります。あわせて2,371人、8か国。2023年にまとめられました。
くらべた相手は、何も受けなかった人たちです。
対面のマインドフルネス講座を受けた人は、講座が終わって1〜6ヶ月後の心理的な苦痛が、受けなかった人より下がっています。
大きさは、小〜中程度。標準化した差で−0.32でした。
もとの苦痛の強さ、性別、年齢、学歴。どれで切っても、効き目が変わる、はっきりした兆候はなかった、と書かれています。
ただし、集まったのは、自分から受けに来た人たちです。
つまり、効きます。ただ、小さい。
もうひとつ、2014年の47試験3,515人のまとめがあります。
こちらは、病気のある人を含む集団です。2,371人のほうとは、集めた人がちがいます。
不安・抑うつ・痛みは小〜中程度よくなる。でも、薬や運動、ほかの行動療法より瞑想が優れているという証拠は、なかった。
前向きな気分、注意、睡眠、体重については、効かないという弱い証拠か、証拠が足りない。
薬や運動にくらべて、勝っているとも、負けているとも出ていない——ここが、測って確かめられた効き目の上限です。
効くのは不安と苦痛。薬や運動を上回るという証拠は、出ていません。
「脳が変わる」は、期待の側にある
期待の側で、いちばん大きいのがこれです。
数週間の瞑想で、脳の形が変わる。
出どころは、2011年の、片側16人の研究でした。
2022年に、1群75人で追試が出ています。灰白質の体積も、密度も、皮質の厚さも、動きませんでした。
話だけが、先に広まった。
くわしくは瞑想の科学的根拠に置きました。
脳の形が変わらないとして、では、何が測れているのか。
約8%。ただし、ものさしで動く
考えごとがふえて落ち着かなくなった人のほうにも、数字があります。
2020年に、瞑想の有害事象を扱った83の研究、6,703人分がまとめられました。
有害事象の総発生率は8.3%。厚生労働省のサイトも、この約8%は心理療法で報告されている割合とほぼ同じだ、と書いています。
ただし、8.3%はぜんぶをならした数字です。
実験として組まれた研究では、3.7%。
ふだんの実践をそのまま追った調査では、33.2%。
幅が、広い。
同じことが、測り方でここまで動きます。
なかみも、見ておきます。有害事象の報告があった55件の研究のうち、不安を挙げた研究が33%、抑うつが27%、認知の異常が25%でした。
これは人の割合ではなく、研究の件数の割合です。
分母が、ちがいます。
厚生労働省のサイトは、そこを率にせず「最も多く報告されたネガティブな影響は、不安と抑うつでした」とだけ書いています。
心の病気の経験がない人にも、起きています。
細かく聞くと、83%になる
もっと細かく聞いた研究も、あります。
2021年、8週間のマインドフルネス認知療法を受けた96人に、独立した評価者が44項目の面接をしました。
瞑想に関連する副作用を1つ以上あげた人は、83%。
いやな感じの体験は58%、日々の機能に悪影響が出た人は37%、悪影響が長引いた人は6〜14%でした。
書いた研究者たちは、この83%という数え方をしても、率はほかの心理療法と同程度だとしています。
8.3%と83%は、けんかしていません。
83の研究をならして数えるか、96人にひとつずつ聞いていくか。
数え方の差です。
つまり、落ち着かなくなったのは、あなたのやり方が悪かったからではないです。
心理療法に副作用があるのと同じで、瞑想にもある。
それが数えられている、というだけです。
同じ体験でも、意味は人が決めている
では、何が「意味ない」を決めているのか。
2017年に、欧米で仏教系の瞑想をしている人たちに、面接をした調査があります。
瞑想にともなう体験は、7つの領域、59種類に分かれました。
だいじなのは、そのあとです。
同じ体験をしていても、それをどう解釈し、どう対応するかは、人によって大きくちがっていた。
受け止め方を分ける要因は、4つの領域、26種類。実践する人の側、実践のやり方、人間関係、健康行動です。
同じ一回の瞑想が、ある人には「何も起きなかった」になり、ある人には「不安がすこし引いた」になる。
分けているのは、体験そのものより、ものさしのほうです。
「脳が変わる」というものさしで測れば、一回の瞑想では何も起きていないことになります。
ものさしを、変えます。
「不安の目盛りがひとつ下がる」というものさしなら、測れる大きさに入ってきます。
4週では出ず、8週で差が出る
最後に、期間です。
2019年の研究です。瞑想をしたことがない18〜45歳を、1日13分のガイド付き瞑想と、13分のポッドキャストを聞く群に分けました。
8週間です。
4週間の時点では、2つの群に差が出ていません。
8週間で、瞑想の群だけ、気分の悪化が減り、注意・作業記憶・再認記憶が上がっています。
1ヶ月でやめた人が「意味ない」と感じたのは、差の出る前に測っているからです。
1日13分を、8週間。4週間では、差が出ない。
期待が、測られた大きさより大きい。
測るのが、8週より早い。
このどちらかがあると、効いていても「意味ない」に見えます。
今日の話をまとめると
瞑想は、意味がないのではないです。
測られた効き目は、心理的な苦痛が小〜中程度下がるところまで。健康な大人2,371人で確かめられました。
別の3,515人のまとめでは、薬や運動を上回る証拠は出ていません。
約8%は不快な体験をする。ただしその率は、測り方で3.7%にも33.2%にもなります。
そして4週では出ず、8週で差が出る。
ここが、分かれ目です。
意味ないと感じた正体は、この数字と、期待の大きさのずれです。
今夜、3分だけ使ってください。カレンダーに、明日から8週間、毎日13分の枠を入れる。枠の名前は「瞑想」ではなく「不安の目盛りをひとつ下げる」にしておく。
数えるものを先に決めておくと、4週目でやめずにすみます。
効き目の大きさをどう読むかは、引き寄せの法則に科学的根拠はあるのかで同じものさしをつかっています。
書いている僕のことは、プロフィールにあります。





