瞑想は意味ないのか|2,371人で測った効き目と、8%に出る不快な体験

瞑想は意味ないのか|2,371人で測った効き目と、8%に出る不快な体験

上の金の線が、期待。下の水面が、測られた効き目。瞑想が意味ないと感じる理由は、この差にある。
上の金の線が、期待。下の水面が、測られた効き目。瞑想が意味ないと感じる理由は、この差にある。

瞑想を1ヶ月つづけて、何も変わらなかった人。

目を閉じているあいだに考えごとがふえて、かえって落ち着かなくなった人。

どちらも「意味ない」と言いたくなります。僕は、その言い分を否定する気はないです。

先に結論を書きます。瞑想は意味がないのではなく、期待の大きさが、測られた効き目より大きいだけです。

期待の側と、測られた側を、べつべつに並べます。

順番に書きます。

測ると、効き目はこの大きさ

健康なふつうの大人だけを集めた、13の試験があります。あわせて2,371人、8か国。2023年にまとめられました。

下がると確かめられたもの心理的な苦痛(健康な大人2,371人・−0.32)不安・抑うつ・痛み(臨床を含む3,515人)証拠が足りないもの前向きな気分・注意睡眠・体重薬や運動より優れている、という証拠下がると確かめられたもの心理的な苦痛(健康な大人2,371人・−0.32)不安・抑うつ・痛み(臨床を含む3,515人)証拠が足りないもの前向きな気分・注意睡眠・体重薬や運動より優れている、という証拠
効くのは不安と苦痛。大きさは小〜中程度で、薬や運動を上回る証拠はない。

くらべた相手は、何も受けなかった人たちです。

対面のマインドフルネス講座を受けた人は、講座が終わって1〜6ヶ月後の心理的な苦痛が、受けなかった人より下がっています。

大きさは、小〜中程度。標準化した差で−0.32でした。

もとの苦痛の強さ、性別、年齢、学歴。どれで切っても、効き目が変わる、はっきりした兆候はなかった、と書かれています。

ただし、集まったのは、自分から受けに来た人たちです。

つまり、効きます。ただ、小さい。

もうひとつ、2014年の47試験3,515人のまとめがあります。

こちらは、病気のある人を含む集団です。2,371人のほうとは、集めた人がちがいます。

不安・抑うつ・痛みは小〜中程度よくなる。でも、薬や運動、ほかの行動療法より瞑想が優れているという証拠は、なかった。

前向きな気分、注意、睡眠、体重については、効かないという弱い証拠か、証拠が足りない。

薬や運動にくらべて、勝っているとも、負けているとも出ていない——ここが、測って確かめられた効き目の上限です。

効くのは不安と苦痛。薬や運動を上回るという証拠は、出ていません。

「脳が変わる」は、期待の側にある

期待の側で、いちばん大きいのがこれです。

片側16人「脳が変わる」の出どころ2011年。ここから世界に広まった変わらず灰白質の体積・密度・厚さ2022年の追試。1群75人でくらべた出典: Hölzel et al. 2011/Kral et al.2022片側16人「脳が変わる」の出どころ2011年。ここから世界に広まった変わらず灰白質の体積・密度・厚さ2022年の追試。1群75人でくらべた出典: Hölzel et al.2011/Kral et al. 2022
広まった話の出どころと、追試の結果。2ヶ月では、脳の構造は変わらなかった。

数週間の瞑想で、脳の形が変わる。

出どころは、2011年の、片側16人の研究でした。

2022年に、1群75人で追試が出ています。灰白質の体積も、密度も、皮質の厚さも、動きませんでした。

話だけが、先に広まった。

くわしくは瞑想の科学的根拠に置きました。

脳の形が変わらないとして、では、何が測れているのか。

約8%。ただし、ものさしで動く

考えごとがふえて落ち着かなくなった人のほうにも、数字があります。

3.7%実験として組まれた研究8.3%83研究6,703人をならした率心理療法とほぼ同じ割合33.2%ふだんの実践を追った調査出典: Farias et al. 2020(83研究・6,703人)3.7%実験として組まれた研究8.3%83研究6,703人をならした率心理療法とほぼ同じ割合33.2%ふだんの実践を追った調査出典: Farias et al.2020(83研究・6,703人)
同じ有害事象でも、どう測ったかで率が動く。8.3%は、全部をならした数字。

2020年に、瞑想の有害事象を扱った83の研究、6,703人分がまとめられました。

有害事象の総発生率は8.3%。厚生労働省のサイトも、この約8%は心理療法で報告されている割合とほぼ同じだ、と書いています。

ただし、8.3%はぜんぶをならした数字です。

実験として組まれた研究では、3.7%。

ふだんの実践をそのまま追った調査では、33.2%。

幅が、広い。

同じことが、測り方でここまで動きます。

なかみも、見ておきます。有害事象の報告があった55件の研究のうち、不安を挙げた研究が33%、抑うつが27%、認知の異常が25%でした。

これは人の割合ではなく、研究の件数の割合です。

分母が、ちがいます。

厚生労働省のサイトは、そこを率にせず「最も多く報告されたネガティブな影響は、不安と抑うつでした」とだけ書いています。

心の病気の経験がない人にも、起きています。

細かく聞くと、83%になる

もっと細かく聞いた研究も、あります。

副作用を1つ以上83%いやな感じの体験58%機能への悪影響37%長引く悪影響6〜14%出典: Britton et al. 2021(96人・8週間)
8週間の講座を受けた96人に、44項目で聞いた場合。長引く悪影響は6〜14%の幅で、棒は幅の下寄りに描いている。

2021年、8週間のマインドフルネス認知療法を受けた96人に、独立した評価者が44項目の面接をしました。

瞑想に関連する副作用を1つ以上あげた人は、83%。

いやな感じの体験は58%、日々の機能に悪影響が出た人は37%、悪影響が長引いた人は6〜14%でした。

書いた研究者たちは、この83%という数え方をしても、率はほかの心理療法と同程度だとしています。

8.3%と83%は、けんかしていません。

83の研究をならして数えるか、96人にひとつずつ聞いていくか。

数え方の差です。

つまり、落ち着かなくなったのは、あなたのやり方が悪かったからではないです。

心理療法に副作用があるのと同じで、瞑想にもある。

それが数えられている、というだけです。

同じ体験でも、意味は人が決めている

では、何が「意味ない」を決めているのか。

体験7つの領域・59種類受け止め方4つの領域・26の要因で変わる意味ものさしで決まる体験7つの領域・59種類受け止め方4つの領域・26の要因で変わる意味ものさしで決まる
同じ体験でも、解釈と対応は人によって違った。意味を決めているのは、ものさしのほう。

2017年に、欧米で仏教系の瞑想をしている人たちに、面接をした調査があります。

瞑想にともなう体験は、7つの領域、59種類に分かれました。

だいじなのは、そのあとです。

同じ体験をしていても、それをどう解釈し、どう対応するかは、人によって大きくちがっていた。

受け止め方を分ける要因は、4つの領域、26種類。実践する人の側、実践のやり方、人間関係、健康行動です。

同じ一回の瞑想が、ある人には「何も起きなかった」になり、ある人には「不安がすこし引いた」になる。

分けているのは、体験そのものより、ものさしのほうです。

「脳が変わる」というものさしで測れば、一回の瞑想では何も起きていないことになります。

ものさしを、変えます。

「不安の目盛りがひとつ下がる」というものさしなら、測れる大きさに入ってきます。

4週では出ず、8週で差が出る

最後に、期間です。

開始未経験の18〜45歳。1日13分の瞑想と、13分のポッドキャストに分ける4週2つの群に差が出ない8週瞑想の群だけ、気分の悪化が減り、注意と記憶が上がる開始未経験の18〜45歳。1日13分の瞑想と、13分のポッドキャストに分ける4週2つの群に差が出ない8週瞑想の群だけ、気分の悪化が減り、注意と記憶が上がる
1日13分。4週間では差がなく、8週間で差が出た。1ヶ月でやめると、出る前に測っている。

2019年の研究です。瞑想をしたことがない18〜45歳を、1日13分のガイド付き瞑想と、13分のポッドキャストを聞く群に分けました。

8週間です。

4週間の時点では、2つの群に差が出ていません。

8週間で、瞑想の群だけ、気分の悪化が減り、注意・作業記憶・再認記憶が上がっています。

1ヶ月でやめた人が「意味ない」と感じたのは、差の出る前に測っているからです。

1日13分を、8週間。4週間では、差が出ない。

期待が、測られた大きさより大きい。

測るのが、8週より早い。

このどちらかがあると、効いていても「意味ない」に見えます。

今日の話をまとめると

瞑想は、意味がないのではないです。

「脳が変わる」を待つ2ヶ月では起きない。だから4週目に「意味ない」になる「目盛りがひとつ下がる」を数える測れる大きさに入ってくる。13分を8週間、数えるのはこれだけ「脳が変わる」を待つ2ヶ月では起きない。だから4週目に「意味ない」になる「目盛りがひとつ下がる」を数える測れる大きさに入ってくる。13分を8週間、数えるのはこれだけ
この記事の着地。期待を、測られた大きさに合わせる。

測られた効き目は、心理的な苦痛が小〜中程度下がるところまで。健康な大人2,371人で確かめられました。

別の3,515人のまとめでは、薬や運動を上回る証拠は出ていません。

約8%は不快な体験をする。ただしその率は、測り方で3.7%にも33.2%にもなります。

そして4週では出ず、8週で差が出る。

ここが、分かれ目です。

意味ないと感じた正体は、この数字と、期待の大きさのずれです。

今夜、3分だけ使ってください。カレンダーに、明日から8週間、毎日13分の枠を入れる。枠の名前は「瞑想」ではなく「不安の目盛りをひとつ下げる」にしておく。

数えるものを先に決めておくと、4週目でやめずにすみます。

効き目の大きさをどう読むかは、引き寄せの法則に科学的根拠はあるのかで同じものさしをつかっています。

書いている僕のことは、プロフィールにあります。

出典・参考文献

  1. Galante J, Friedrich C, Dalgleish T, Jones PB, White IR, Collaboration of Mindfulness Trials (CoMinT). Systematic review and individual participant data meta-analysis of randomized controlled trials assessing mindfulness-based programs for mental health promotion. Nature Mental Health 2023;1(7):462-476.
  2. Goyal M, Singh S, Sibinga EMS, et al. Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis. JAMA Internal Medicine 2014;174(3):357-368.
  3. Hölzel BK, Carmody J, Vangel M, et al. Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density. Psychiatry Research 2011;191(1):36-43.
  4. Kral TRA, Davis K, Korponay C, et al. Absence of structural brain changes from mindfulness-based stress reduction: Two combined randomized controlled trials. Science Advances 2022;8(20):eabk3316.
  5. Farias M, Maraldi E, Wallenkampf KC, Lucchetti G. Adverse events in meditation practices and meditation-based therapies: a systematic review. Acta Psychiatrica Scandinavica 2020;142(5):374-393.
  6. Britton WB, Lindahl JR, Cooper DJ, Canby NK, Palitsky R. Defining and measuring meditation-related adverse effects in mindfulness-based programs. Clinical Psychological Science 2021;9(6):1185-1204.
  7. Lindahl JR, Fisher NE, Cooper DJ, Rosen RK, Britton WB. The varieties of contemplative experience: A mixed-methods study of meditation-related challenges in Western Buddhists. PLoS ONE 2017;12(5):e0176239.
  8. Basso JC, McHale A, Ende V, Oberlin DJ, Suzuki WA. Brief, daily meditation enhances attention, memory, mood, and emotional regulation in non-experienced meditators. Behavioural Brain Research 2019;356:208-220.
  9. 厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業(eJIM). 瞑想とマインドフルネスについて知っておくべき8つのこと(原文 NCCIH・監訳 大野智). 2021年公開・2023年2月7日更新.
  10. 厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業(eJIM). 瞑想[各種施術・療法 - 一般](原文 NCCIH). 2023年2月7日更新.

瞑想を勧めるためにも、やめさせるためにも集めていません。効いた側の数字、出なかった側の数字、不快になった側の数字を、同じものさしで並べました。練習の量と効き目の関係を扱った論文は、本文を開けなかったので使っていません。「元の研究が何回引用されたか」の数え直しも、出どころをたどれなかったので落としました。

← 記事一覧に戻る